得なの!?損なの!? 公的年金の繰り下げ受給


 

最近、リタイア後の収入を増やす方法として「公的年金の繰り下げ受給」が注目され、マスコミ等でも取り上げられるようになってきています。

 

繰り下げ受給によって年金額が増えればリタイア後のマネープランにゆとりができ、長生きリスクへの備えにもなります。

 

今回は、公的年金の繰り下げ受給についてメリットと注意点をご紹介します。

※繰り下げ受給による増加率は1941年4月2日以降に生まれた人の制度とします。

 

 

繰り下げ受給で最大42%の増額

 

老齢基礎年金、老齢厚生年金の支給開始年齢はいずれも原則として65歳ですが、どちらも66歳以降70歳まで1ヶ月単位で受給を繰り下げ年金額を増やすことができます。

 

繰り下げた月数に応じて年金額が1ヶ月当たり0.7%増額され、70歳まで60ヶ月繰り下げると年金額は本来の受給額より42%多くなります

 

増額された金額は生涯変わらないので、長生きするほど受給総額が増えることになります。

 

繰り下げ受給を選択する人はこのところ増えてきているものの、2016年度の場合、繰り上げ受給する人が9.2%なのに対して、繰り下げ受給をする人は2.7%とまだまだ少ないです。

 

しかし、平均寿命の延びとともに長生きのリスクが高まってきているこたから、今後は繰り下げ受給を選ぶ人が増えてくることも考えられます。

 

繰り下げ受給の損益分岐点

 

繰り下げ受給すれば年金額は増えますが、例えば70歳から受給するつもりでいても、それより前に亡くなれば、本人は年金をまったく受け取れません。

 

受給開始後も、早く亡くなると繰り下げ受給しないほうが得になるケースもあります。

 

そこで、受給を繰り下げ場合の受給総額が65歳から受け取ったときの受給総額を超える“損益分岐点”計算します。

 

結果は

何歳から繰り下げ受給してもだいたい受給開始から12年弱となります

繰り下げ受給してから12年以上長生きすれば、繰り下げ受給のメリットがあります。

70歳から受給した場合だと82歳です。

 

2017年の簡易生命表によると、65歳の人の平均余命は男性が19.57年女性が24.43年なので、平均余命を考慮すると70歳まで繰り下げてもモトがとれることになります。

 

特に女性は男性に比べて平均余命が長いので、繰り下げ受給によるメリットは大きいといえます。

 

繰り下げ受給の仕組み

 

老齢基礎年金と老齢厚生年金は両方同時に繰り下げることができます。

 

また、どちらか一方を繰り下げることも可能です。

 

例えば、老齢基礎年金は67歳から、老齢厚生年金は70歳からというように、繰り下げるタイミングをずらすこともできます。

 

ただし、65歳になる前に受給できる特別支給の老齢厚生年金は、繰り下げて受け取る制度はなく、増額されることはありません。

 

65歳からの本来の老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰り下げ受給は66歳以降からとなります。

 

65歳から66歳になるまでの間に遺族基礎年金や障害基礎年金など他の年金の受給権者となった場合、老齢基礎年金を繰り下げることはできません。

 

また、遺族厚生年金や障害厚生年金の受給権者となった場合、老齢厚生年金の繰り下げはできません。

 

老齢基礎年金も老齢厚生年金も、66歳以降に他の年金の受給権を得たら、その時点で増額率が固定されます。

 

そして、65歳からの本来の年金額を遡って受け取るか、繰り下げ受給で増額された老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取るかを選択します。

 

 

繰り下げ受給の手続き

 

繰り下げ受給そのものは手続きを必要としません。

 

老齢年金を受け取るには、支給開始年齢に達した人に対して支給開始年齢に到達する3ヶ月前に送られてくる「年金請求書」を、支給開始年齢に達した後に年金事務所などに提出する必要があります。

 

請求書を提出しなければ繰り下げ受給を選択したことになります。

 

66歳以降、受給を希望するときに「老齢基礎年金・老齢厚生年金支給繰り下げ請求書」を提出すると、請求した翌月から受給が開始します。

 

したがって、65歳の時点で「○歳○ヶ月から受給する」と決めなければいけないわけではありません。

 

繰り下げ受給の請求をするとき、受給を繰り下げるほかに、増額前の本来の年金額を65歳まで遡って一括で受け取るという選択もできます。

 

ただし、年金の時効は5年なので、遡って受け取る場合は、時効で失われる年金が生じないよう、70歳になる前に請求する必要があります。

 

 

繰り下げ受給に関する注意点

 

①加給年金額と振替加算

厚生年金の加入期間が20以上ある人が老齢厚生年金の受給権を得たとき、一定の要件を満たす65歳未満の配偶者がいる場合、配偶者が65歳になるまで、老齢厚生年金に加給年金額が上乗せされます。

 

老齢厚生年金の受給を繰り下げて受給を待機している期間は、加給年金額は受け取れません。

 

老齢厚生年金の受給を開始すれば加給年金額が加算されますが、加給年金額には繰り下げによる増額はありません。

 

加給年金額の対象となっている配偶者が自分自身の老齢基礎年金の受給を開始すると、その配偶者の生年月日に応じて振替加算が加算されます。

 

しかし、老齢基礎年金を繰り下げている間は振替加算も支給されません。

 

老齢基礎年金の受給を開始すれば振替加算も支給されますが、振替加算は増額されません。

 

 

②在職老齢年金

65歳から70歳になるまでの間に働いて厚生年金に加入しつつ老齢厚生年金を受給する場合、給与額(総報酬月額相当額)と年金額に応じて年金額が調整されます。

 

この場合、老齢厚生年金の繰り下げ受給の増額の対象となるのは、在職支給停止額を差し引いた調整後の額となります。

 

また、65歳以降の厚生年金被保険者期間分に係る老齢厚生年金額は、増額の対象とはなりません。

 

 

③遺族厚生年金

老齢厚生年金を繰り下げ受給していた人や繰り下げ受給の待機中の人が亡くなったときに遺族が受給する遺族厚生年金の額は、繰り下げ受給によって増額される前の本来の額に基づいて計算されます。

 

 

④税金・社会保険料

年金額が増えるとそれに対する税金や国民健康保険料などの社会保険料も増えます。

 

繰り下げ受給によって増額された年金額分がそのまま本人の手元に残るわけではありません。

 

なので実際は損益分岐点は数年遅くなります。

 

社会保険料は住んでいる自治体によって違うので、できればあらかじめ調べておきましょう。

 

 

繰り下げ受給を選ぶ際の検討事項

 

年金額が増えるからと安易繰り下げ受給を選択するのではなく、リタイア後のライフプラン全体を踏まえた検討が必要になります。

 

まず確認しなければならないのは、繰り下げ受給によって無年金になる期間の家計の収支です。

 

繰り下げ受給は、

 

企業年金や個人年金、確定拠出年金などの給付が受けられる、

働いて収入を得ることができる、

不動産の賃貸収入がある、

十分な金融資産があるなど、公的年金以外の収入があふ場合の選択肢の1つになるといえます。

 

また、老齢基礎年金・老齢厚生年金のどちらを繰り下げるか、またいつまで繰り下げるかについては、加給年金額・振替加算が受給できなくなる点も考慮して決める必要があります。

 

1943年4月2日以降生まれの人の場合、加給年金額は389,800円です。

 

夫婦の年齢差が大きいほど加給年金額の受給総額が多くなるため、老齢厚生年金を繰り下げ受給するこどで加給年金額がなくなるデメリットは大きいです。

 

加給年金額のカットを避けるためには、老齢基礎年金だけ繰り下げ受給することが考えられます。

 

一方、振替加算の金額は加算を受ける人の生年月日によって異なります。

 

1954年4月2日〜1955年4月1日生まれだと56,748円で、以降は徐々に金額が減り1961年4月2日〜1966年4月1日生まれだと15,028円となります。
(1966年4月2日以降生まれの場合、振替加算は支給されません)

 

振替加算は配偶者の老齢基礎年金に加算されて配偶者が終身受け取ることができるので、振替加算のある配偶者は老齢基礎年金の繰り下げ受給を選択する場合には考慮する必要があります。

 

このように、リタイア後の収支の状況によっては繰り下げられないケースもあります。

 

また、加給年金額・振替加算を考えると繰り下げ受給しないほうがよいケースもあるので繰り下げ受給を選択する際は事前に調べることが大切です。

 


あわせて読みたい

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です