マイニングマシンの現状とこれから!


仮想通貨の「マイニング(採掘)」や人工知能(AI)解析などのために、高速に演算するコンピューター「超高速マシン」の需要が高まっています。

 

超高速マシン特需は、半導体の先端プロセス(回路線幅)開発を促し、高効率な放熱(熱拡散)技術の出番をもたらしそうです。

 

半導体メーカーでは、米シリコンバレーの企業よりも中国の新興企業が存在感を高めており、さまざまな分野で主役が代わり、業界地図が塗り替わる可能性があります。

 

■7ナノ半導体のけん引役に

 

最先端プロセスの半導体を使った超高速マシンが引く手あまたになっています。

 

あらゆるモノがネットにつながるIoTのデータやさまざまな取引のデータから研究開発・経営に価値をもたらすデータを生みだすビッグデータ解析と、ビットコインなど仮想通貨のマイニングが、新たなけん引役です。

 

仮想通貨マイニングでは、決済の正当性の検証で報酬が得られることから、投資家がもうけを生み出すツールとして、2年前後の周期で最先端の超高速マシンを続々と買い増すケースが多いです。

 

このためマイニング用の集積回路(ASIC)は、16nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)世代のプロセス(16nmプロセス)の製造ラインの需要をひっ迫させる主因となっているほどです。

 

2017年末に量産が始まった7nmプロセスの量産でもマイニング用ASICが、需要の大半を占めるとの見方があります。

 

実際、7nmプロセスでは、ブロックチェーン(分散型台帳)技術応用のベンチャー企業であるTRIPLE-1(トリプルワン、福岡市)が自社設計のデータ演算用ASICの生産を18年8月に開始し、これを搭載したマシンの出荷も始めます。

 

国内のGMOインターネットは、やはり自社設計の7nmプロセスのASICの量産を18年10月までに始め、このASICを搭載したマシンを出荷します。

 

■中国新興企業、米エヌビディアを抜く

 

超高速マシンの増殖は、エレクトロニクスなどのハイテク分野の業界地図を塗り替える可能性があります。既に同マシンの開発と投資において主役交代の気配が見て取れます。

 

ここ数年、半導体先端プロセスの製造ラインを真っ先に埋めてきたのは、スマートフォン向けでした。それが今や超高速マシン向けに変わろうとしています。

 

回路パターンを露光するマスクの開発に数百億円かかる先端プロセスでは、1品種で出荷数が数百万個規模のスマートフォン向けでさえ、回収が見込めない恐れがあります。

 

しかも仮想通貨マイニング用ASIC市場を主導しているメーカーは、シリコンバレーに本社や研究施設を置いてハイテク業界の市場を創出してきた米国系企業ではありません。

 

市場を立ち上げ、伸ばしているのは、中国の新興企業ビットメインです。7nmプロセスのASICを開発したトリプルワンやGMOインターネットに先立つこと3~4年前から始動しています。

 

ビットメインは、13年の創業から急成長を遂げて17年に40億米ドル近い利益を上げたとされます。

 

40億米ドルという数字は、自動運転向けAIの演算チップを開発しシリコンバレー企業の中でも破竹の勢いを見せる米エヌビディアがほぼ同期間に稼いだ利益を上回ります。

 

仮想通貨マイニング用マシンで業界1位がビットメインなら、同2位の企業も中国企業です。香港に本社を置くカナン・クリエイティブです。

 

マイニング用マシンや半導体での中国新興企業の台頭は、米国産業界の危機感をあおり、中国との半導体貿易摩擦に火を注ぎかねないほどの脅威になっています。

 

 



 

■「省電力より演算性能」で熱に注目

 

マイニング用マシンの増殖は、半導体や機器の設計思想にも変化をもたらしつつあります。マイニング用マシンの設計では、演算性能が従来以上に重視された結果、チップの発熱を拡散する放熱技術に高い性能が求められるようになってきました。

 

仮想通貨マイニングでは、演算性能が収益に比例します。そこでASICの処理能力の高さが第1の競争軸となります。

 

ここ数年、電子機器設計に大きな影響を与えてきたスマートフォンにおける「演算性能と消費電力のバランスを取る」設計とは大きく異なります。

 

もっとも、マイニング用マシンでも消費電力の増大が電力コストの上昇につながる点に変わりないため、「消費電力当たりの演算性能」はマイニング用マシンの重要な指標ではあります。

 

しかし、極めて低廉な電力を使えて電力コストに敏感ではないユーザーが増えてきました。

 

家庭用の電力量単価が20円台/kWhであるのに対して、数円/kWhで契約している「マイナー(採掘者)」は珍しくなくなっています。

 

相次ぎ新設されている、グループで採掘する「マイニングプール」においては、数万台規模のマイニング用マシンを2~5円/kWhの電力で稼働させている例が多いです。

 

そこでGMOインターネットは、18年8月に発売した最新マシン「B3」で、消費電力よりも演算性能を重視するモードをユーザーが選択できる機能を新設しました。

 

電力量単価が2~3円/kWhのユーザーの要望に応えるためです。なお同社自身は、環境負荷への配慮から、北欧において水力発電と地熱発電で発電した電力を4~5円/kWhと推定される単価で調達し、マイニングを実施しています。

 

このように消費電力より演算性能を重視するユーザーは、マイニング用マシンのクロック周波数と動作電圧を上げます。

 

電力効率は低下し、発する熱が増える。チップでの熱密度が高まるため、熱を素早く拡散する技術が求められるようになってきました。

 

注目を浴びるのが、熱の拡散効率が高い「相変化」技術です。チップが発する熱を液体冷媒の気化熱で奪います。

 

この技術の重要性にいち早く気づき動いたのは、仮想通貨マイニング用ハードウエアを手掛ける米ビットフューリーです。

 

相変化冷却技術に強みのある香港のベンチャー企業アライド・コントロールを15年に買収、マイニング用データセンターに適用中です。

 

仮想通貨やそのマイニング(採掘)は「ブーム」でしかないとの見方があります。ブームに終われば、マイニング用の高速に演算するコンピューター「超高速マシン」による技術や産業へのインパクトも一過性に終わってしまうのでしょうか。

 

■「仮想通貨ブーム」終わる?

 

以前にも、ビットコインの相場が低迷した2018年前半から、半導体受託製造(ファウンドリー)最大手のTSMCのマイニング用集積回路(ASIC)の需要は落ち込みました。

 

それまでは、スマートフォン向け半導体需要の落ち込みを補うほどの稼ぎ頭でした。このケースのように、仮想通貨の相場が大きく下落すれば、先端プロセスの半導体需要を落ち込ませることになります。

 

このほかの懸念材料として、ビットコインなど主力の仮想通貨は、採掘可能量(発行総額)があらかじめ決まっているという点があります。

 

決済の正当性の証明に対する報酬が徐々に減りいずれはほとんどなくなります。ビットコインでは、これまで発行額に応じて報酬が半減し、その半減周期は約4年でした。

 

これが続く限り、いずれ報酬は投資に見合わない額になる。マイニング用ハードウエア事業は、市場規模の縮小が確実なのです。

 


■仮想通貨以外に応用広がる

 

これに対し、ブロックチェーン(分散型台帳)による応用事例は増えるだろうとの見方は多いです。

 

例えばマイニング用ハードウエアを手掛ける米ビットフューリーは、ブロックチェーンを応用した不動産登記システムをジョージア(グルジア)で稼働させました。

 

ウクライナでは政府文書を管理するプロジェクトも推進中です。応用が仮想通貨以外に広がれば、マイニング用マシンの需要喚起につながります。

 

さらにマイニング用マシンの処理フロー、すなわち「大量のデータを入力して高速演算し、価値あるデータを出力する」には、今後のデータ社会で普遍的な需要があります。

 

ビッグデータを機械学習によって学習させる、得られたエンジンにデータを続々と入力し推論させる──といったものです。

 

富・価値を創造する超高速マシン

 

例えば、株式など金融商品の売買に関する判断データを出力するフィンテック分野では、高速処理によって競合より一瞬でも早く判断データをユーザーに提示できれば、莫大な価値をもたらす可能性があります。

 

あらゆるモノがネットにつながるIoT分野でも、カメラなどセンサーデータを即時に解析し価値あるデータを生み出す用途が将来においても間違いなく見込めます。

 

実際、仮想通貨マイニング用マシンで業界1、2位の中国ビットメインや同カナン・クリエイティブがマイニング用ASICの次に開発するのは人工知能(AI)の推論エンジン向けASICです。

 

ASIC開発において、マイニング用回路とAI推論用回路に共通性は「全くない」(複数のマイニング用ASICの開発者)が、高速データ演算の設計経験を持つ技術者を生かすとみられます。

 

それによりビットメインが狙うのは、中国全土に敷設されつつある監視カメラ群が続々と取り込む大量の画像データを解析するAI用途です。

■採掘後の市場に商機

 

では仮想通貨の新規発行がなくなった後、マイニング用マシンは消滅するのでしょうか。この問いに1つの答えを出そうとしているのがTRIPLE-1(トリプルワン、福岡市)です。

 

データ演算用ASICの生産を手掛ける同社だが、マイニング用マシンの事業化が最終的な目的ではありません。

 

マイニング用マシンは、決済認証に伴う報酬を当てにする投資ツールとしては、報酬源の縮小とともに消え去ると考えるのが自然です。

 

しかし、仮想通貨や同様のデジタル資産(参加者間で共通の価値を共有できる仮想的な資産)に対する需要はなくならないと同社は見ます。

 

これらの取引は、仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーンの仕組みで認証され、認証は取引者が「手数料」を支払って成立する、というのが同社の見立てです。

 

マイニング用マシンは、いわば「認証インフラ」の構成要素に姿を変えて存在し続けることになります。

 

現在、既存の通貨において銀行が果たしている役割と同じであり、超高速マシンには高い信頼性が欠かせなくなります。

 

取引は、少額決済のマイクロペイメントにまで広がり、大量の取引を瞬時に認証する必要性から、インフラを担う超高速マシンには、ますます高い処理能力が求められます。

 

超高速マシンはブロックチェーンのインフラに

 

トリプルワンのマイニング用マシンは、同社が(同マシン向けに)世界で初めて製造したという7nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)プロセス(回路線幅)ASICで開発したものですが、これは技術力の高さをアピールして潜在顧客の信頼を獲得したいためです。

 

仮想通貨の採掘後を待たずとも潜在顧客は存在し、超高速マシンの出番があると同社は考えています。実物資産による交換をデジタル資産による交換に置き換える応用がいくつか存在していると見ているようです。

 

具体的な応用を同社は明らかにしていませんが、パチンコの出玉交換の仕組みは好例と言えます。

 

現在はパチンコで勝ったユーザーはパチンコ玉を現金ではなく商品に替え、それをパチンコ店外で現金に換えます。

 

これに対し、通貨とはみなされていない仮想通貨をパチンコ玉の代わりにします。パチンコ店は、ホールの一部にマイニング用マシンを並べて採掘し、それをユーザーに提供することもできるようになります。

 

 



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