「分散」投資を検証する!


「長期」投資と並んで資産形成の王道と言われる「分散」投資ですが、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

 

また、分散投資の手段のひとつとなるバランス型ファンドについて、資産比率やコストがどのようにパフォーマンスに影響するか検証します。

 

投資する資産の数を増やせばリスクは低減するのか

 

資産運用においては、複数の資産に分散投資することでリスクを軽減させることができます。

 

それでは、資産を増やせば増やすほどリスクは低下していくのでしょうか。

 

実際、過去10年間で1資産(国内株式のみ)に投資した場合と複数資産に均等に分散投資した場合の計6パターンのシュミレーションをしてみました。

 

まず、国内株式に国内債券を加えた2資産への分散投資の結果を見ると、リターンが3.47%、リスクが9.58%となっています。

 

リスク1資産(国内株式)のみの場合に比べて半分近くに低減し、複数資産への分散投資の中でも最も低くなっています。

 

しかし、投資資産を増やし、先進国の株式・債券を加えた4資産、新興国の株式・債券を加えた6資産に分散投資した場合を見ると、リスクは上昇する一方でリターンは低下しています。

 

さらに、国内・海外リートを加えた8資産、コモディティ・ヘッジファンドを加えた10資産に分散投資した場合と比べると、2資産に比べて8資産、10資産はいずれもリスクが上昇します。

 

一方、リターンは8資産が3.64%と2資産を小幅に上回ったものの、10資産では2.39%と6パターンの中で最も低くなっています。

 

分散効果を高めるには「相性」が重要

 

では、分散効果を高めるためには何に注意すればよいのでしょうか。

 

それは資産と資産の「相性」です。

 

この相性は相関係数という指標で表され「1」に近いほど同じ値動きを、「-1」に近いほど逆の値動きをする傾向があります。

 

9資産の中で国内株式との相関係数が唯一マイナスとなったのは、国内債券の-0.16となっており、分散投資先として重要となっています。

 

なお国内債券とともに、株式と相性の良い資産に為替ヘッジ付きの外債があります。

 

国内株式と為替ヘッジ付き外債の相関係数は-0.04となっており、国内債券に次いで相性が良いとされています。

 

近年、バランス型ファンドの中でも国内債券の代わりに為替ヘッジ付き外債を組み入れるファンドも多くなっていますが、これは国内の低金利環境下で相対的に高い利回りと分散効果が期待できるからです。

 

一方、国内債券以外の相関係数は、すべて0.5以上となっており、一定程度似通った値動きをする傾向が見られます。

 

REIT、コモディティ、ヘッジファンドなどのオルタナティブ資産を含め、幅広い資産へ投資するだけで必ずしも分散効果が高まるわけではありません。

 

モーニングスターのサイトではファンドの分類(カテゴリー)同士の相性を相関係数で把握できるようになっていますので、ぜひご活用して下さい。

 



 

バランス型ファンドで効果的な分散投資は可能か

 

個人投資家でも、手間をかけずに複数の資産に分散投資を行うことができるファンドとして、バランス型ファンドがあります。

 

前述のシミュレーションでは、複数資産に均等投資した前提でパフォーマンスの計算を行いましたが、実際には均等比率で分散投資を行うバランス型ファンドは少なく、資産毎の比率にメリハリをつけて運用するタイプの方が多くあります。

 

資産比率がパフォーマンスに与える影響を見るうえで重要なポイントは、「株式・REIT」の比率となります。

 

モーニングスターでは株式・REITを比較的値動きが大きいリスク資産として位置付け、その比率によってバランス型ファンドを分類しています。

 

株式・REIT比率25%未満を「安定」、同比率25%以上50%未満を「安定成長」、同比率50%以上75%未満を「バランス」、同比率75%以上を「成長」としています。

 

実際にバランス型ファンドのカテゴリー別に過去10年間の累積リターンを見ると、株式・REIT比率が高いカテゴリーほどパフォーマンスが良好であり、「成長」の累積リターンは39.52%と、「安定」の20.87%に比べ倍近くになっています。

 

一方で「成長」はリスクも高く、2008年9月のリーマンショック後は一時4割近くの下落を経験していますが、対照的に「安定」は2割も下落しておらず、相場の急変局面で特に株式・REITの比率が値動きに大きく影響していることがわかります。

 

値動きに影響するのは比率だけではありません。

 

モーニングスターでは類似の運用をするファンド同士を比較することが重要であるとの考えに基づき、カテゴリー内での相対パフォーマンスを評価しています。

 

例えば、投資家が比較的リスクを抑えたバランス型ファンドを好むのであれば、「安定」に属するファンド同士を比較すべきということになります。

 

実際、国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF含む)において、同カテゴリーに属するファンドのうち2018年5月末時点で10年の運用実績がある33本について同期間のトータルリターンを比較します。

 

すると、年率4%台が1本、3%台が5本、2%台が17本、1%台が8本、0%未満が2本となっており、リスク資産の比率が近いファンド同士でも運用の巧拙によってパフォーマンスに大きく差がついていることがわかります。

 

コストはパフォーマンスにどれほど影響するのか

 

パフォーマンスへの影響という点で無視できないのがコストです。

 

信託報酬は、ファンドを保有し続ける限り基準価額から差し引かれ、特に長期で持つほど影響が大きくなるため、ファンド選びの際は注意するようにしましょう。

 

重要なのは、カテゴリー内での相対的なコストの高さてす。

 

バランス型の4つのカテゴリー内で、過去10年間のトータルリターンが上位50%、下位50%になったファンドの信託報酬等(税込)の平均値を比較します。

 

4つのカテゴリーすべてでパフォーマンス上位50%のほうが、下位50%に比べ低コストになっており、コストが影響していることがわかります。

 

ただ、バランス型の中でも、各資産に対してパッシブ運用を行うのか、アクティブ運用を行うのか、などといったことにもコストは左右されるため、各ファンドの運用スタイルについても確認するようにしましょう。

 

分散に関するQ&A

 

Q.機動的資産配分タイプのファンドなら、より成績がよい?

 

A.近年、バランス型ファンドの中で「機動的資産配分」と呼ばれるタイプのファンドが投資家の関心を集めています。

 

機動的資産配分のファンドは、2008年のリーマンショックを教訓として、資産配分を柔軟に変更することで相場急変に対応可能なファンドとして注目を集めるようになりました。

 

もっとも、機動的資産配分のファンドが総じて良好なパフォーマンスとなっているわけではありません。

 

2018年5月末時点でバランス型ファンド893本中、その中で機動的資産配分のファンドは165本あります。

 

しかし、このうちモーニングスターレーティングが付与されている96本のレーティング平均は2.5と、固定資産配分のファンド521本のレーティング平均3.0を下回っています。

 

そして、カテゴリー内での相対パフォーマンスは劣後しています。

 

機動的資産配分は、資産の割安・割高などに対するファンドマネージャーの目利き、資産配分を決定するモデルの有効性によってパフォーマンスが大きく変動します。

 

実際には、運用成績が低迷しているファンドが多いことが示唆されており、購入するのであればファンドの実力を見極めることが固定資産配分のファンド以上に重要となります。

 

なお、機動的資産配分のファンドには、現金比率を変動させることでリスクコントロールするタイプも多いです。

 

ただし、ファンドマネージャーの見通しに反してリスク選好の市場環境となったときは現金比率を高めに維持していることがパフォーマンスの押し下げ要因となります。

 

過去のリスク回避局面でそうした運用が十分に機能したかなど、パフォーマンスをよくチェックする必要があります。

 

Q.効果的な分散投資は「国・地域」のほか何がポイントに?

 

A.分散投資の観点では幅広い国・地域に投資したほうが分散効果を得られるため、合理的な投資家であれば国際分散投資をするはずです。

 

しかし、実際には投資家は自国資産を選好して投資する傾向があると言われています。

 

それを「ホームバイアス」といいます。

 

国内投信市場においてホームバイアスが当てはまるかどうかを見てみましょう。

 

2018年5月末時点で国内投信市場(ETFは除く)の純資産額は約63兆円となっているが、そのうち「国際」が59%となっています。

 

それに対して、「国内」は26%にとどまり、国内投信市場に関して言えばホームバイアスは当てはまりません。

 

国内投信市場を見る限り投資家は十分に海外資産への分散投資を行っていますが、注意したいのは、海外資産の中身になります。

 

「国際」のうち純資産額上位ファンドの顔ぶれを見ると、第1位はハイイールド債ファンド、第2位〜5位まではREITファンドとなるなど、比較的リスクが高めのファンドが目立ちます。

 

上記のファンドを含め、国内において低金利が続く中で積極的にリターンを追求する、いわゆるサテライト型のファンドが人気を集めています。

 

こうしたファンドのみに資産が集中している場合は、安定したリターンの獲得を目指す「コア」型のファンドも組み合わせ、分散効果が発揮されるように注意する必要があります。

 

 



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