住宅ローンに金利上昇圧力!?


日銀の黒田総裁は7月31日、金融政策決定会合後の会見で「長期金利の変動幅はおおむねプラスマイナス0.1%の幅から上下その2倍程度に変動しうることを念頭に置いている」と発言しました。

 

欧米が金融緩和の縮小に動く中、これまでかたくなに超低金利を続けてきた日銀が「0.2%までの金利上昇を受け入れたのではないか」との思惑も働き、日本の長期金利は8月2日に一時0.145%と昨年2月以来の高水準まで上昇しました。

 

それでも日本はまだまだ超低金利で、ここ数年住宅ローンでは変動金利型の人気が極めて高い状況が続いていますが、リスクはないのでしょうか?

 

■目先の金利にとらわれない

 

住宅金融支援機構が年に2回発表する「民間住宅ローン利用者の実態調査」によると、56.5%の人が金利変動の影響を受ける変動型を選択しているうえ、増加傾向にあるそうです。

 

また、当初5年間、10年間などと一定期間は固定金利で、それ以降は金利変動の影響を受ける固定期間選択型を選ぶ人と合わせると8割以上にもなります。

※住宅金融支援機構「2017年度 民間住宅ローン利用者の実態調査」より

 

変動型や固定期間選択型を選択した人の4~5割の人は、住宅ローンの商品特性や金利上昇リスクへの理解度があまり高くはない結果も出ています。

 

「目先の金利が安く見えるから」という短絡的な理由で変動型や固定期間選択型を選んでいる人が実はかなりいるようです。

※住宅金融支援機構「2017年度 民間住宅ローン利用者の実態調査」より

 

■毎月の支払いへの影響をチェック

 

金利がいつ、どの程度上昇するかは専門家でも予想することは極めて困難です。

 

ただ、金融緩和をこのまま永続させることができないのは誰の目にも明らかで、しばらくは低金利が続くものの、「いつか金利は上昇する」という見解が一般的ではないでしょうか。

 

このため、変動型や固定期間選択型を選ぶのであれば、金利が上がった場合、どの程度の返済額になるのか、自分の支払い能力はどうなのかを事前にチェックしておく必要があるのです。

 

例えば、変動金利0.9%、返済期間35年、借入額5000万円、元利均等返済、ボーナス返済なしの場合、下の図のように金利に変動がなければ毎月13万8825円の返済を420回行い、総支払額は約5830万円となります。

 

次に、ひとつの例として、3年後から10年間かけて0.2%ずつ金利が上昇、つまり最終的には2.9%まで金利が上昇したらどうなるかをみてみましょう。

 

変動型は返済額が5年間一定で、返済額が上昇する場合はそれまでの返済額の1.25倍が上限というルールがあります。

 

このため、金利が上昇しても返済額が変わらない期間は、利払いが増え元本返済が減少しています。

 

金利上昇が止まった時点から徐々に利払いが減少し、元本返済が進んでいくのが図を見るとわかると思います。

 

今回想定した金利上昇だと、最終的に毎月の返済額は18万3580円まで上昇します。

 

当初返済額との差は4万4755円。この金額が今から13年後、つまり3年後から10年間かけて金利が2.9%まで上昇したとき、例えば子供の学費などと併せてもゆとりをもって支払えるかどうか、借りる前に検討しておく必要があるのです。

 

2.9%まで上昇すると、総支払額はなんと約7200万円に達します。

 

仮に全期間固定金利1.4%で借りていれば、毎月の返済額は15万655円、総支払額は約6330万円にとどまるので、金利上昇リスクを負うなら全期間固定金利のほうがよいという考え方もできそうです。

 

もちろん、金利上昇のパターンをいくつか想定し、返済額がどのように変化するか確認したうえで、払える余裕があるならば変動型を選択してもよいのではないかと思います。

 

■固定期間選択型は返済額の上昇が青天井

 

変動型は返済額が1.25倍までという制限があるため、金利上昇が激しいと返済額より利払い額が大きくなるケースがあります。

 

元本返済は一切進まず、さらに未払い利息が積みあがっていくという最悪の状態になる可能性もあります。

 

このような場合は手元資金で繰り上げ返済するなどの対策が必要となります。

 

固定期間選択型の場合、変動型のように返済額が5年間一定で1.25倍を上限とするルールがありませんので、固定期間が終了すると返済額が大幅に上昇する可能性があるので注意が必要です。

 

また、固定期間終了後に優遇金利の適用がなくなる商品が多い点も注意したいところです。

 

また、「変動金利が上昇したら、そのタイミングで固定金利に借り換えればよい」という人がいますが、これは大きな間違いです。

 

変動金利が上昇し始めるということは、それより以前に固定金利が上昇しているのが一般的な金利の動きだからです。

 

変動金利が上昇してしまってからでは遅いのです。

 

■金融商品の購入と同様、慎重に選んで

 

物価上昇率2%を目指して金融緩和を続ける日銀ですが、現状はこれ以上の金利低下を見込めない水準まで来ています。

 

超低金利による金融機関の経営への副作用に留意しながら当面は低水準を維持する方針ですが、欧米の中央銀行が金融緩和を縮小する方向に動く中、日本もいつかは金融緩和を縮小しなければならない時期が来るでしょう。

 

また、低金利を維持するために日銀が国債を買い続けるとしても、財政的にいつかは限界がくるといわれています。

 

つまり、いつかは金利が上昇する可能性があるのです。

 

こうした背景に鑑みれば、30年を超える返済を前提とする住宅ローンで変動型や固定期間選択型を選ぶかどうかは、株式や投信などの金融商品を購入するときと同様、慎重に見極めるべきだと思います。

 




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