投資信託を保有する個人投資家の半数近くが損失を抱えています。金融庁が投信を販売する銀行に実施した調査で、こんな実態が明らかになりました。

 

過度な分配金や短期の売買で十分な運用収益を得られず、長期の資産形成に結びついていません。販売会社も改革に動きつつあるが、事態を重く見た金融庁は運用成績の共通指標などで顧客本位の徹底を求めます。

 

金融庁が都銀や地銀の計29行を対象に2018年3月末時点の運用損益を調べたところ、損失を抱える顧客は46%と全体の半分近くに達しました。

 

損失率が10%以下の個人が全体の35%ともっとも多かったです。個別行では「平均の運用損益率がマイナスの金融機関もあった」というのです。

 

運用損益は、投信の購入時と今年3月末時点の評価額を比較し、累計の受け取り分配金(税引き後)や販売会社に支払う手数料なども加味して全体の収益を算出しました。

 

ここ数年は緩和マネーの流入で世界的に株価が堅調に推移しています。本来なら個人が高い収益を得ていいはずですが、実態が異なるのは日本固有の投信の構造があるからです。

 

銀行や証券会社はかねて自らの手数料収入を優先し、個人の短期売買を助長しているとの批判がありました。

 

販売手数料ばかりがかさめば、肝心の運用利回りは低下してしまいます。ある金融庁幹部は「金融機関のトップは手数料収入の多寡は気にしても、顧客がもうけられているかは見向きもしてこなかった」と批判しています。

 

特に問題視されてきたのが「毎月分配型」です。過度な分配金を顧客に支払い、元本の取り崩しが常態化しました。生活費の足しにする高齢者には人気があったが、現役層の資産形成にはあまり向きません。

 

調査では投信の保有期間と運用リターンの関係も分析しました。長期保有するほど投資収益を得やすい傾向がみられました。

 

運用コストにあたる信託報酬の高さが、運用収益とは必ずしも結びつかないこともわかりました。

 

公募投信の残高は約110兆円と過去最高水準にあります。「貯蓄から資産形成」の実現には、投信を活用した長期投資の定着が欠かせません。

 

金融庁は個人が投信の成績を比較できる共通指標を設け、銀行や証券会社に公表を求める考えです。主に設定から5年以上の投信を対象とし、販社に顧客本位の徹底を促す。

 



金融庁が「顧客本位の営業」を強く求めているのに対し、金融機関は商品や販売戦略の練り直しに動いています。

 

外資系のフィデリティ投信は昨年11月、米国の不動産投資信託(REIT)で運用する投信の分配金を大きく引き下げました。

 

中長期の基準価格の上昇を目指す方針に転換したのです。他の運用会社も追随し、足元で「高分配競争」は沈静化しています。

 

投信全体で見ても短期売買の温床とされた新規設定は減少傾向にあります。

 

販売会社にも変化の兆しはあります。銀行や証券会社は投信の運用期間が長く、実績のある投信を中心に販売するようになっています。

 

2000年設定の三井住友アセットマネジメントの「げんきシニアライフ・オープン」のように、設定から10年以上たってから残高が伸びる投信も増えました。

 

金融庁の強い意向もあり、こうした傾向は一段と強まっていきそうといえるでしょう。