日銀は6月27日に1~3月期の資金循環統計を発表しました。驚いたのは家計が保有する投資信託の残高です。

 

3月末時点で73兆円強と、3カ月前に発表した昨年12月末時点の残高(109兆円)から36兆円も減少しました。個人が売却したり、運用成績が急速に悪化したりしたせいではありません。

 

新たな基礎資料等を採用し、部門別の残高を精緻化した」ためだとのことです。改定後の新しい統計によると「貯蓄から投資へ」の資金の流れは2015年を境に足踏みしています。

 

資金循環統計のデータは遡及改定されており、日銀のホームページからは改定前のデータは消えています。

 

昨年12月末時点では家計が保有する投信の残高は109兆1358億円でアベノミクス前の12年9月末の56兆1894億円から94.2%も増えていました。

 

投信と上場株式(114兆4667億円)とを合わせると223兆6025億円で、個人金融資産1880兆2865億円(改定前)に占める比率は11.9%に達していました。

 

この比率は1980年代後半の株式バブルのピーク(89年3月末の15.4%)には届かないですが、08年のリーマン・ショック前のピーク(07年6月末の11.4%)を上回り、アベノミクス下で「貯蓄から投資へ」の流れが着実に進んでいることを示していました。

 

ところが、今回の遡及改定では昨年12月末時点で家計が保有していた投信の残高は76兆4407億円と、33兆円も下方修正されました。

 

アベノミクス前からの増加率が43.7%にとどまっただけでなく、過去最高だった15年6月末の83兆2162億円(改定値)を7兆円近く下回りました。

 

個人金融資産全体の金額も3カ月前の発表値よりも約25兆5000億円少ない1854兆7004億円に改定されました。投信と上場株式の合計額190兆9074億円の個人金融資産に占める割合は10.3%に低下しました。

 

さらに、今年3月末には株式相場が下落したこともあり、家計が保有する投信の残高は73兆2075億円に、上場株式は110兆3497億円に減少しました。

 

両者を合わせると183兆5572億円で、個人金融資産1829兆205億円に占める割合は10.0%に低下しました。

 

アベノミクス前の12年9月末の6.9%から上昇したことは確かですが、15年6月末の10.5%は下回りました。リーマン・ショック前のピーク(07年6月末の11.2%)とはまだ1.2ポイントも開きがあります。

 

なぜこんな大きな差が生じたのでしょうか。

日銀は「新たに入手した基礎資料や制度変更等を反映するため、遡及改定を年に1回実施し、合わせて推計方法の見直しを行っている」と説明しました。

 

投信に関しては「金融機関の財務諸表データ、REIT、公募・私募およびETFの残高に関する新たな基礎資料等を採用することにより、部門別の残高を精緻化したうえで、残差を金融機関部門に幅広く帰属させるように変更した」ということです。

 

平たくいえば、精査の結果、家計以外の投資家が投信を多く保有していたことが分かったというわけです。

 



投資信託協会によると、投信の純資産総額は公募と私募とを合わせて3月末時点で208兆2761億円でした。日銀の改定後の統計によれば、このうち家計の保有分は35%と、従来推計の53%を大幅に下回ります。

 

5年前の13年3月末には純資産総額112兆5838億円のうち、58%に当たる65兆3062億円を家計が保有していました。日銀の古い統計は家計の保有比率の大幅な低下を見逃してきました。

 

5年前と比較して、投信の保有が大幅に増えたのが中小企業金融機関です。13年3月末には5兆7601億円の保有にとどまっていたましたが、今年3月末には8.1倍の46兆6198億円になりました。

 

しかし、信用金庫や信用組合が投信の保有を急増させたわけではありません。資金循環統計の中小企業金融機関にはゆうちょ銀行が含まれます。

 

ゆうちょ銀の有価証券報告書によると、18年3月末の投信の保有額は39兆426億円に達しました。中身は主として外債投信だというのです。

 

ゆうちょ銀が超低金利下で国債での運用を減らし、外債に乗り換えたことが中小企業金融機関の投信保有額を押し上げました。

 

日銀は家計、中小企業金融機関に次いで投信の保有が多いです。13年3月末には2兆2849億円を保有していただけですが、現在は年6兆円のペースでETFを購入しており、今年3月末の時価ベースの残高は24兆6011億円になりました。

 

次が国内銀行で、5年前の4兆6671億円から15兆9753億円に増加しました。その次の生命保険会社は、保有残高が5年前の16兆1221億円から14兆3972億円に減少しました。

 

いずれにしても、日銀の新しい統計は、家計の投信保有が15年6月末の83兆2162億円をピークに足踏みしていることを示しています。

 

今年3月末の日経平均株価は当時よりも1200円強高いが、家計の投信保有額は約10兆円少ないです。

 

毎月分配型投信の純資産総額がこの間に42兆円から27兆円に減ったことを考えあわせると、毎月分配型投信を解約した資金はマネー・リザーブ・ファンドにもとどまらずに、よそに出ていったのかもしれません。

 

金融庁は投信による資産形成を推進しているものの、企業型確定拠出年金で買った投信の残高は5兆7411億円(3月末)、NISAを通じて買った投信の残高は4兆7926億円(17年末)にすぎません。

 

米国では確定拠出年金(401k)の資産5兆2500億ドル(3月末)のうち67.6%に当たる3兆5480億ドルがミューチュアルファンドになっています。