メガバンクや大手証券会社の出身者らの立ち上げたベンチャー企業が、地方の空き工場で仮想通貨の「採掘」に挑んでいます。

 

電力や施設の賃料が安く、少しでも節約したいベンチャーにとってメリットが大きいからです。受け入れる地域の行政側も進出に期待を寄せています。

 

■電気代、工場の賃料安く
仮想通貨のマイニング専用装置がずらりと並び、24時間体制で稼働

 

6月上旬、カーテンなどに使うレースを作る工場だった福井市内の施設は熱気に包まれていました。

 

テニスコート3面分の広大な工場の中に約500台の専用装置が並び、空冷ファンの音が響きます。

 

ここでは、昨年9月に立ち上がったばかりの仮想通貨関連ベンチャーのアルトデザインが、24時間体制でビットコインやイーサリアムといった仮想通貨のマイニングを続けています。

 

マイニングはコンピューターで暗号を解き、ネット上で共有する「ブロックチェーン」に仮想通貨の取引データを記録する作業です。

 

報酬として仮想通貨が得られるため、金などの採掘になぞらえてマイニングと呼ばれます。

 

同社の委託を受けた業者の作業員約10人が装置の設置や管理にあたっています。

 

稼働中の装置で理論上は月間約200イーサリアム相当(5月時点、約1160万円分)の通貨を採掘できるということです。

 

アルトデザインの本社は東京だが、なぜ福井なのか疑問に思われる方もいると思いますが。

 

その理由は、東京に比べて産業用電気が安く、装置を並べられる広い建物が安く借りられるからです。

 

施設で使える電力は2千キロワットと一般家庭約2600軒分に相当します。空き工場の賃料の半額を補助する福井市の助成金制度を活用しています。

 

マイニングはこれまで水力発電による電力が安く手に入る中国や北欧の山間部で、大規模に取り組む海外の業者が多くいました。

 

クラウドマイニングと呼ばれるサービスもあり、海外でのマイニングに日本人の投資家がお金を投じている例も多いです。

 

主に顧客の装置を預かって採掘し、得られた仮想通貨の一部を報酬として受け取り、残りを顧客に送っています。

 

今の顧客数は10社程度だが、ひっきりなしに依頼が来ており、請け負いきれずに断っている状況だそうです。

 

日本円で報酬を受け取らないのは、仮想通貨を渡して日本円を受け取れば、資金決済法が定める仮想通貨交換業に該当する恐れがあるためだからです。

 

資金決済法では仮想通貨交換業を「仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換」などと定めています。

 

仮想通貨交換業をするには金融庁の厳しい審査を通過して登録業者になる必要があり、登録のコストや時間がかかります。

 

金融庁によると、マイニングを請け負う事業は「どういう契約かによって資金決済法上の仮想通貨交換業に該当するかしないかを判断することになる」と言います。

 

■相場変動などリスクも
アルトデザインは福井市の助成金制度を利用して空き工場を借りました。

 

マイニングには相場変動のリスクも伴います。十分な報酬が得られるかは仮想通貨の相場に左右されます。

 

仮想通貨が円換算で大きく下落すれば、マイニングにかかるコストが報酬を上回ってしまうことになります。

 

昨年12月には1ビットコインが200万円を上回っていたが、その後急落して4月には一時60万円台まで下がってしまいました。

 

主要国が規制を強めれば、さらに下落する可能性もあります。逆に有用な産業として認知されていけば利用の機会が広がり価格は上がりやすくなります。

 

先を読むのは難しいですが、それでも、アルトデザインと同様に仮想通貨の成長を期待して、マイニングに参入する日本企業が相次いでいます。

 

DMMは2月、国内最大規模のマイニング施設を金沢市に開設しました。GMOインターネットは北欧でマイニングに取り組みます。

 

アルトデザイン社員の平均年齢は約30歳で、多くが金融機関を飛び出して仮想通貨の将来性にかけて集まりました。

 

海外勢や大手も巻き込んだ競争に加えて、態度がはっきりしない各国の規制。挑戦はこれから正念場を迎えます。