昨今、毎月分配型の投資信託への批判が続いています。

 

その理由が「タコ足」配当です。これはタコが自分の足を食べてしまうように、毎月分配型投信が原資を分配金として払い戻すことを指しています。

 

つまり、原資を引き出してしまうのは、「そもそも資産形成のための投資として容認できない」ということなのです。

 

確かにせっかく資産を作ろうとする時に、収益であろうと原資であろうと、資産形成に回した資金を引き出してしまえば、複利で運用するという資産を増やす力をそいでしまいます。

 

しかし、毎月分配型投信を「運用しながら資金を引き出す」機能がある金融商品として考えると、これはまさしく退職後の世代にとってはニーズに合った金融商品とも言えるのです。

 

運用しながら引き出すという機能は、資産の減り方を抑制するためには非常に重要な方法だからです。その点を少し考えてみましょう。

 

■「タコ足」をする重要性

 

お金との向き合い方を2つの局面に分けて考えてみます。退職後の資産を作る「資産形成世代」と、退職した後に資産を活用しながら引き出す「資産活用世代」です。

 

それぞれを簡単にA世代とD世代と呼ぶことにします。
すなわち、A世代は山を登る世代で、D世代は山を下りる時代です。

 

50代後半や60代前半の人は山の頂上近辺にいて、これから山を下りる世代を迎えるということになります。

 

山登りでは、登るより下りる方がケガをしやすいといわれます。資産形成でも同じように、D世代の方がA世代より慎重で十分な計画を立てたお金との向き合い方が求められるのです。

 

さて、D世代のお金との向き合い方は、「資産を引き出して使うこと」にほかなりません。しかし、ただ使っていってしまうだけだと、あっという間に資産が枯渇します。

 

今や人生設計では100年を想定した視点が求められます。そのためにはいかに資産の寿命を延ばして自分の人生よりも長く持ちこたえられるようにできるかが重要なのです。

 

そこで資産の減り方を抑制するために、「運用しつつ引き出す」のが大切になります。

 

引き出すという機能は、金融庁が2017年11月に出した行政方針の中で金融サービスの一つとして認められています。

 

D世代は運用だけではなく、引き出しも合わせて考えねばなりません。ここで重要なのは、資産をさらに増やす必要はなく、資産が減っていくこと自体は容認するという点です。

 

ここでもう一度、毎月分配型投信への批判を考えてみましょう。

 

原資を分配金として払い戻してしまうことは、投資として容認できない」というものでしたが、実はD世代のお金との向き合い方では、投資の原資を生活費として引き出していくことが求められているのです。

 

雑な言い方かもしれませんが、あえて「タコ足」をしようということです。

 

銀行に預金をしてそこから引き出すよりは、投資信託で運用しながらそこから引き出す方がよほどいい方法だと思いませんか?

 

毎月分配型投信にはもちろん課題もあります。分配金が資産残高の変動に合わせて増減するようにできていないことです。

 

相場が下落して資産残高が減っている時に一定額の分配金を出し続けると、想定以上に元本が毀損するのです。

 

これをいかに食い止めるかが大きな課題です。多くの投資家が分配金の引き下げを運用の巧拙と結び付けてしまうことから、運用会社も販売会社も分配金の引き下げにちゅうちょし、それが悪い結果につながってしまっているのです。

 

D世代の引き出しについても同じことが言えます。D世代は毎月、あるいは毎年、一定の金額を引き出すよりは資産の変動に合わせて引き出し額を変化させる方が合理的な行動なのです。

 

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■引き出し額はどう考える

ではどうやって引き出し額を考えるのがいいでしょうか。

 

まず生活費を想定して、そのうちどれくらいを公的年金と勤労収入でカバーできるのかを考えます。そして残りを資産から引き出すと考えると、引き出し額が見えてきます。

 

すなわち、「退職後の生活費=公的年金+勤労収入+金融資産からの引き出し額」と言えるわけです。

 

この金融資産からの引き出し額を、持っている資産に対する比率で考え、引き出し率を計算します。

 

例えば、資産からの引き出し額が毎月10万円、年間120万円で、保有資産が3000万円であれば、引き出し率は年4%です。

 

この比率を固定して、運用の結果に応じて引き出し額を決めていくのです。

 

例えば資産が3500万円に増えればその4%に当たる140万円を引き出し、2500万円に減ったら年間100万円しか引き出さないという具合です。

 

手数料・税金は考慮せず引き出しを「率」で考えるようになると、一つ楽になることがあります。それは運用収益率との比較が容易になることです。

 

例えば、引き出し率を4%と設定すれば、それを前提にどう運用をすればいいのか考えやすくなります。

 

運用収益率を2%で設定すれば、平均して毎年2%ずつ資産が減っていく形になります。運用収益率を3%で設定すれば毎年平均して1%ずつ資産が減っていくわけです。

 

60歳で保有資産が3000万円あるとして、その資産が毎年1%ずつ減っていくとすると、15年後の75歳の段階でも資産は2580万円残る計算になります。

 



 

減ってはいますが、さほどでもないという感じがしませんか。D世代の資産との向き合い方は、資産運用と引き出しを共に「率」で考えるという一工夫が必要になるわけです。

 

分配金がこうした形で変わる投信は、残念ながら今のところありません。

 

そこで必要な年間引き出し額が大きく変化してもいいように、分配金は十分に少ない額に固定し、その差額を資産から別に引き出すようにするのです。

 

毎年の必要額を、分配型投信の分配金に追加して、元本から引き出すことを考えてみましょう。