仮想通貨、キムチプレミアムとは?


ビットコインは日本から韓国に送金するだけで価値が上がります。仮想通貨は国によって人気が違い、取引価格に差が出るためだからです。

 

キムチ・プレミアム」とも呼ばれるこんな価格形成は日本国内にもあるのはご存知でしょうか。

 

交換業者によって取引価格が異なり、差益を狙う投機が荒い値動きを生みます。金融当局も投資家保護の観点から注視し始めました。

 

仮想通貨は交換業者によって取引価格が異なり、差益を狙う投機が荒い値動きを生みます。

 

日本で働くある20代の韓国人男性がビットコインにのめり込んだのは、昨年5月のことです。

 

渡航費用として友人から借りたおよそ50万円を送金手数料が安いビットコインにして返したところ、円を直接交換するよりもウォン建ての価格が1割上がりました。

 

仮想通貨熱の高い韓国では、ビットコインの価格が他国の市場と比べて高くなっています。

 

仮想通貨業界ではこの割増金のことを「キムチ・プレミアム」と呼びます。

 

ビットコインの価格が急騰した今年1月時点で日本は1ビットコインが約200万円だったのに対し、韓国では約260万円。キムチ・プレミアムは最大で50%ほどもありました。

 

仮想通貨は色々な国で取引され、国ごとに価格差が出ます。例えばアフリカのジンバブエのビットコイン価格は足元で日本の1.8倍ほどになります。

 

ハイパーインフレに苦しむ国民は自国通貨を信じられず、仮想通貨の人気が高いからです。

 

国境をまたぐ取引で価格に違いが出るのは、当然ともいえます。円を元手に外貨に投資した後、円相場が下落すれば差益をとれると同じ仕組みです。

 

しかし、ビットコインは国によって価格が違う「一物二価」の金融商品です。

 

さらに大きな問題はキムチ・プレミアムのような現象が国境をまたぐ取引だけでなく、国内にもあることです。

 

取引業者が刻一刻と更新して提示する売買レートに、わずかながら差があります。

 

この差が埋まる前に安く買って高く売れば必ず差益がとれることになります

 

前出の韓国人男性は友人と自動売買プログラムを作り、最初の1カ月で数十万円の収益を上げました。「さや取り」と呼ばれる取引手法にあたります。

 

投資家からまず1億円の出資を受け、今年1月には運用会社まで立ち上げました。日韓で9つの交換業者を軸に運用し、毎月約10%の報酬を稼いでいます。

 

男性は「裁定取引は相場変動の影響を受けにくいのが強みだが、多くの人が目を付けると価格の差が収れんする可能性もあるだろう」と語ります。

 

ただ実際には価格差が残り続けています。ある銀行幹部は5月、タブレット端末でビットコイン価格を初めて確認すると仰天しました。

 

当時はビットフライヤーやビットバンクなど国内6つの交換業者の間で、最大1600円の取引価格差がありました。

 

東京証券取引所で取引されるトヨタ自動車の株価は1つで、さや取りをすることはできません。

 

仮想通貨に詳しい京大大学院の岩下直行教授によると「ビットコインは機関投資家がサイバー攻撃を恐れて売買しない。為替や株式と違って、大口取引が成立しにくく価格の差が埋まりにくい」と言います。

 

「仮想通貨の信頼性がない状態を表している」との見方です。日銀の黒田東彦総裁も「仮想通貨は法定通貨と異なり裏付け資産がない。送金や支払いへの使用はわずかだ」と指摘します。

 

「ビットコインは10倍や20倍のテコをかけて取引できる。投機的だ」「仮想通貨は実体経済と結びつきが乏しく、需給で変動するのは市場として危うい」。金融庁が今春に立ちあげた仮想通貨の研究会では懸念が相次ぎました。

 

ニューヨーク連銀も価格のゆがみについて問題点を言及しています。金融庁はこうした背景も踏まえ、外国為替証拠金(FX)と同様にレバレッジ規制などを議論します。

 

仮想通貨の投資家は個人を中心に年間延べ360万人いると言われています。投資額は約70兆円に膨らみました。

 

しかし、国内ですらゆがむ価格形成は、新しい金融取引のインフラとしてはまだ未成熟であることを映しています。

 



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