コインチェックの驚くべき収益


本日は多額の仮想通貨流失事件を引き起こしたコインチェックの続報です。

 

営業利益率は破格の86%――。マネックスグループは4月26日の決算発表で、4月16日に買収を完了した仮想通貨交換業者コインチェックの2018年3月期業績を公表しました。

 

仮想通貨の売却収入から売却原価を差し引いた売上高は前の期比約64倍の626億円で群を抜く増収率です。

 

市場をさらに驚かせたのは利益の水準で、営業利益は同約75倍の537億円になりました。

 

3600社を超える東京証券取引所の上場企業の中で、直近の通期決算で最も高い営業利益率になったのは全国保証の78%です。

 

この水準をさらに上回るコインチェックの利益率がいかに異例なものであるかがわかります。

 

マネックスGの株価もこのコインチェックの利益率により、昼休み中の開示を受けて個人投資家の買い注文が殺到しました。

 

午後は制限値幅のストップ高上限にあたる前日比約18%高の670円まで急騰しました。

 

高収益のからくりはこうです。仮想通貨の交換業者は「取引所」と「販売所」の2種類の取引を手がけます。

 

交換業者が自ら仮想通貨をいったん保有した上で売りさばく「販売所」の場合は、業者の仕入れ値と売値の差額である利ざやが往復で10%前後にも達するとされます

 

13もの仮想通貨を扱うコインチェックはこの利ざやで「ぬれ手であわ」の利益を得ていました。

 

特に17年後半にはあらゆる仮想通貨の価格が売買を伴いながら急騰し、交換業者に絶大な利益をもたらしました。

 

1月に流出した仮想通貨NEM(ネム)についてコインチェックは約460億円の補償を終えました。

 

事件が起きた当初は「新興勢力のコインチェックに巨額の資金を返済などできない」との見方が大半でした。

 

しかし今回、投資家の見立てをはるかに上回る利益を稼いでいたことが数字面でも裏付けられたことになります。

 

焦点は「異次元の高収益」が持続できるかです。マネックスGの松本大社長は26日の決算会見で「今後の規制強化で利益率は変わっていくとは思う。かつての外為証拠金取引(FX)会社のように、競争の激化でスプレッド(利ざや)も縮むかもしれない」と話しました。

 

NEMの流出事件もあり、投資家が仮想通貨交換業者に寄せる視線は厳しさを増しています。

 

仮想通貨の価格上昇も一服しており、今後は交換業者の「適正利潤」を巡る議論が活発になるのは必至です。

 

収益の細りの兆候はありました。マネックスGの開示資料によれば、コインチェックがサービスを再開した2~3月の営業利益率は25%まで低下していました。

 

松本社長は会見で「顧客を確保して事業の規模を拡大できれば、絶対額の利益をかつてのレベルにまで高めることは可能だ」とも強調しました。

 

本業の証券業務はSBI証券などライバルに水をあけられ、マネックスGは起死回生を狙ってコインチェックを買収しました。

 

価格高騰で個人投資家を熱狂の渦に巻き込んだ仮想通貨。その後に起きたコインチェック事件は仮想通貨の売買を担う交換業者のずさんな管理体制を浮き彫りにしました。

 

投資家保護が求められるなか、インターネット証券やIT大手が新たな担い手になろうとしています。

 

仮想通貨市場はさらに多くの利用者を獲得できるのか、正念場を迎えています。

 

 

マネックスはコインチェックを買収

 

転換期に差し掛かっているのは、仮想通貨の交換業者です。ネット証券大手のマネックスグループはコインチェックを買収しました。

 

2017年4月に仮想通貨交換業の登録制が導入されましたが、管理体制がずさんだったコインチェックは「みなし業者」にとどまりました。

 

マネックス傘下となり、今後2カ月内の正式な登録を目指します。

 

仮想通貨交換業は新興ベンチャーが手がけるケースが大半でした。しかし、ここにきて大手のIT企業やネット証券の参入が相次いでいます。

 

ヤフーは子会社のZコーポレーションを通じ、交換業者のビットアルゴ取引所東京への出資を決めました。

 

18年秋にも仮想通貨の取引サービスを始め、SBIも傘下の仮想通貨会社が取り扱いを目指しています。

 

呼び水になっているのは利益率の高さです。仮想通貨の大手交換会社は「取引所」と「販売所」の2種類を運営するケースが多く、交換業者が自ら仮想通貨をいったん保有した上で売りさばく「販売所」の場合は、利ざやが最大10%にも達するとされます。

 

コインチェックの18年3月期業績は営業利益が前の期比約75倍の537億円に拡大しました。

 

営業利益率は空前の86%に達し、仮想通貨ブームがいかに絶大な利益をもたらしたかを浮き彫りにしました。

 

この高収益に着目して、登録を目指す企業数は100社超にも上ります。

 

これまでの熱狂ぶりは数字にも表れています。仮想通貨の値上がり益を狙い、日本では2018年3月時点で少なくとも延べ350万人が仮想通貨取引に参加しました。

 

ビットコインなど主要な5つの仮想通貨の取引額は17年度が合計で69兆円と、16年度比で約20倍に拡大しています。

 

「通貨としての利用が前提になっておらず、単に価格が上がるから買うという過剰投機が起きていた」――。日本仮想通貨交換業協会の会長に就任したマネーパートナーズの奥山泰全社長はこれまでの仮想通貨市場をこう表現します。

 

ところが1月にコインチェックから「NEM(ネム)」が不正流出し、仮想通貨取引への懸念が広がりました。

 

世界的な規制強化の動きも重なり、仮想通貨の価格は急落しました。

 

情報会社コインマーケットキャップによると、世界の仮想通貨全体の時価総額は直近で約4000億ドル(44兆円)と年初のピークから半減しています。

 



「値動きが激しすぎて今はビットコインで物を買う気になれない」と都内の飲食店に勤める50歳代の男性は話します。

 

ビットコインでの支払いが可能な店舗はビックカメラやIDOMの高級中古車販売店など国内で5万店舗を超えるが、「通貨」としての利用はごく一部にとどまります。

 

しかし、大和総研の矢作大祐研究員は「今後は通貨としての機能を取り戻す」と指摘します。

 

矢作氏が注目するのは、仮想通貨に参入を表明するインターネット企業が相次いでいることです。

 

仮想通貨交換業者への出資を通じて参入するヤフーのほか、LINEやメルカリも交換業者の登録準備を進めています。

 

こうしたネット企業は顧客にビットコインなど仮想通貨の売買の場を提供して手数料を得るだけでなく、「独自の仮想通貨を発行するなどし、自社サービス内での決済への利用を視野に入れているとみられます。

 

発行する仮想通貨を円に対して緩やかに変動する仕組みにするなど工夫は必要ですが、既存サービスの利用者が多いだけに、仮想通貨が決済手段として一気に広がる可能性があります。

 

価格の急騰と急落を経て、仮想通貨の過剰投機の局面は終わりを迎えつつあります。

 

今後はいかにして、決済などに利用できる「実体あるもの」にしていくかが普及のカギになりそうです。

 

もう一つ、仮想通貨の普及に欠かせない要素があります。投資家や利用者が安心して仮想通貨を使えるようにする仕組みづくりです。

 

そのカギを握る金融庁は仮想通貨市場の育成方針をいったん取り下げ、利用者保護にかじを切ります。

 

コインチェックで起きた巨額流出事件をきっかけに、国内の仮想通貨交換業者全32社の内部管理体制を厳しく検査しています。

 

金融庁は2017年4月に改正資金決済法を施行し、世界に先駆けて交換業者に登録制を導入しました。

 

資産の分別管理や外部監査の受け入れ、マネーロンダリング対策などを義務付けました。

 

改正法施行前から営業し、登録申請中であれば「みなし業者」として認める経過措置もとりました。

 

コインチェックの事件が起きるまで「交換業者の実態把握はほぼ野放しだった」。金融庁は事件以降、みなし業者全16社への立ち入り検査に着手。

 

ずさんな経営が次々と明らかになり、4月下旬までに10社に行政処分を出しました

 

7社は自主的に交換業からの撤退を決め、4月以降は登録業者にも順次、立ち入り検査を進めます。

 

各国も規制を強めようと模索します。中国は仮想通貨交換業の店舗閉鎖に踏み切りました。

 

韓国は仮想通貨技術を使った資金調達を禁じました。インドは仮想通貨の取引を禁止する方針を表明しました。

 

欧州連合は利用者保護を優先する法規制を検討し、米国も規制の枠組みを考えます。

 

国境を瞬時にまたぐ仮想通貨の規制には国際協調が欠かせません。日本は各国と情報交換を密にして、サイバー犯罪への対策を主導する考えです。

 

ただ、過度な規制はビジネスの機会を潰しかねません。

 

仮想通貨とどう対峙するか、難しいかじ取りを迫られています。

 

 




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